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 「容れもの・実入る」 3








         









■ 着想
 これまで多くの箱を作ってきた。それぞれに被せの持ち味があるのだが、蓋はかぶさらなくても、印籠のようにぴっちりと収まり込まなくともよいのではないかという誘惑が頭をもたげた。滑り蓋である。蓋部分と、身の部分をまったく別の材で加工して、軽みのある容れ物を作ってみようとした。

■ 胎
 蓋の発想から始った。まず最初に鉄刀木(たがやさん)から軽妙な形を試行錯誤し、探し当てた。その蓋となる板の表は洗い朱の目はじき塗り(木目には朱漆が入り込まないように仕上げること)で、できる限り鉄刀木の木の面構えを大切にした。身となる部分は檜の塊で、蓋に沿った身という発想である。身には容れ物空間を作り出すために大きく彫り進み、刀の表情を生かして、仕上げもあえて緩やかなつくりとした。

■ 技法
 蓋のピン部分は丸玉に長い足を差し込んで身にも長く入り込んでいる。この加工は初めてなので玉の大きさ、足の太さ、限りない色合いを持つ朱の選定までかなりの試行錯誤を強いられた。

■ サイズ
 10×8×6p

■ コメント
 つまみボタンの形状や色味を作り出すことは面白く、まだまだ可能性がありそうである。まだ蓋や身と出会ってないつまみがたくさんできつつある。

■ 販売価格
 27万円