No.1    <頒布室へ戻る>


 刳り盛器 「空・包む」



       



      



■ 着想
 偶然入手した栓(ハリギリ)の分厚いかたまり。このスケールの盛器を見たこともない。この塊を最大限に生かすスパー楕円の中に胸のすくような空間を作り出したい。しかしこれからの作業とか完成のディテールがそれほど明確になってはいない不安とワクワク感だけがあった。

■ 胎
 栓は白い素地に木目が透明感を持って展開する美しい木である。しかし刳物の材としては固い。丸掬い鑿や能面づくりに使われる小道具、四方ぞり鉋(刃を支える台木が四方にそりあがっており、全体に曲面をなしている。主に曲面カーブを内側から削り出すときに使う。当然カーブの種類によって、曲面の半径によってさまざまな大きさとカーブの鉋が要求される)を使い、作業を始めてから一か月ぐらいで一服、しばし眺める。これらを繰り返して成形。丸文部分を一段掘り下げて胎を完成させた。

■ 技法
 できる限り栓の木目を殺さないように、梔子で全体を黄色味を帯びるように染めて摺り漆で中からの広がり部分を仕上げた。一方両端の丸文部分は生漆で固め、麻布着せの本堅地で塗り上げ、切金、玉虫貝、金粉、分厚い夜光貝の螺鈿で豪華な感じを作り上げた。大きさに負けないような緊張感を持った作品となったと思っている。

■ サイズ
 55×35×9p

■ コメント
 感性と技能に加えて腕力がこれほど必要になるとは計算できなかった。刃物の消耗が激しく研ぎの作業が繰り返しやってくるので、鋼の知識に加えて、いろいろな技能の獲得につながった。

■ 販売価格
 180万円