「残照映える」
■ 着想
これまで多くの箱を創ってきました。それぞれに被せの持ち味がありますが、蓋はかぶさらなくても、印籠のようにぴっちりと収まり込まなくともよいのではないかという誘惑が頭をもたげました。滑り蓋です。蓋部分と、身の部分をまったく別の材で加工して、軽みのある容れ物を作ってみようとしました。
■ 胎・つまみ
まず最初に鉄刀木の板材からゆったりとした軽妙な形を生み出した後、目はじき朱塗りで仕上げました。身となる部分は檜の塊で、容れ物空間を作り出すために大きく彫り進み、仕上げもあえて緩やかなつくりとしました。二つの池が出来上がりました。表面は濃厚な木地呂塗とし、蓋に合わせた身という発想です。
とくに多くの時間を費やしたのはつまみ部分でした。つまみ部分は滑り構造の心棒が通っていますが、この作品の核となる部分ですので、ブナ材の木球を慎重にカットして楽しい表情をつくり、置平目と螺鈿、さらに両方の勾配部分は異なる朱塗りに挑戦し、表情に深みを持たせました。
■ 技法
蓋のピン部分は丸玉に長い足を差し込んで身にも深く入り込んでいるので、とくに正確な加工が要求されました。
■ サイズ
19×13×8 p
■ コメント
つまみボタンの形状や色味を作り出すことは面白く、まだまだ可能性がありそうで、まだ蓋や身と出会ってないつまみが生まれつつあります。
■ 販売価格
27万円