No.6    <頒布室へ戻る>


 槇・盒 「時の積層を照らす」


           


           



■ 着想
 ここ数年作品の形、加飾がどうも人のわがままに過ぎるような傾向がみられた。自然の形に聞いてみるとこから新しいタイプの作品ができないだろうかとかんがえていた。木は人の都合で板や角材に姿を変えるが、もしかしたらそれは本来木が持っている主張とは違うのではないか。

■ 胎
 偶然入手した槇のごつごつした塊があった。3年ほど仕事場の片隅に置かれてあって、時折ちらっと眼をやる。乾燥が進み、何本かの亀裂が生じてきた。その目に斧を恐る恐るかつ大胆に入れて、私に扱えるような塊を手に入れた。残念ながら95%は薪ストーブ行きとなった。木に聞きながら成形し、正確な帯鋸でこわごわと二つに割り、身になるところと被せになるところをそれぞれドリル、丸掬い鑿、能面加工に使う小道具、ミニミニ鉋などで刳り進めた。身の部分からの立ち上がりを輪積の紐立てとした。

■ 技法
 できる限り木のありようを生かすために単純にと心がけた。中は赤みの弁柄塗り立て、外は摺り漆(生漆を摺り重ねて磨き上げる技法)で仕上げた。

■ サイズ
 20×6×9p

■ コメント
 長い時間を吸い込んだ木の生きてきた記憶と時間にどこまで迫れたろうか・・・。
 千葉市稲毛ギャラリー 藤澤保子『漆芸の展開』に展示作品

■ 販売価格
 28万円